こちらの時間で朝8時52分、今日のSGのキャンセルが決まりました。
夜明けまえから小雪でレンタカーにもうっすら雪。お世話になったメルヘンチックなペンションをあとにしてクヴィットフェルに向かう途中、降雪は強くなっていきました。
レースオフィスと同じ建物にあるプレスセンター内では、オーストリアのコーチがネットで天気予報を見ながらあきらめ顔。
現状、視界もきかずに、天気の好転も望めないことからキャンセルとなりました。
正式発表はまだですが、おそらくこのレースの代替はなし。SGは残り1レースとなりそうです。これが総合優勝争いには多少影響しそうですが、SGはコステリッチもライヒもポイントをとる可能性は大きかったので、一概にスヴィンダルやキューシュに不利とは言えないと思います。彼らもコースアウトする可能性だってあるわけですから。
昨日の朝、ペンションのおじいちゃんがこちらの新聞をみせてくれました。
事故からちょうど1年。今回、マティアス・ランツィンガーがひざから下を失った現場に戻ってきたことを報じた記事でした。
同じカメラマンとして、最高の写真だと思います。
「マティアス・ランツィンガー、クヴィットフェルにカムバック」
と一言あれば、言葉はいりません。
皆さんも感じていらっしゃるとは思うのですが、日本の感覚だと、まだ事故から1年しかたっていないのに、そっとしてあげればいいのに、(キッツビュールでもそうでしたが)公の前にひっぱり出されてかわいそう、という意見が大勢を占めるのではないでしょうか。
手術が終わって目が覚めたら、自分の片足、ひざから下がなかったという状況を想像してみてください。それがアルペン王国オーストリアの将来を嘱望されたスキー選手だったのですから、失望は他人にははかりしれないものだったに違いありません。
それでも、こちら、ヨーロッパの人々はたくましいという表現があうのかどうかわかりませんが、とにかく、
「後ろを振り返るな。前を向いてしっかり進め。応援するぞ。」
という考えなんだと思います。
確かにアルペンスキーは後ろを振り返ることはできません。次から次へとくる旗門をクリアしていかなければならないのです。
「しっかり前を向いて、前だけ見て、力の限りをつくしてゴールを目指せ。」
アルペンスキーは人生そのものかもしれません。少なくとも私にとってはそう思えます。
写真は昨年の事故現場に立つランツィンガー。手で顔を覆って、「あのときに戻れたら」と涙してるように見えます。
確認していませんが、キッツビュールでも両足で滑っていたので義足をつけていると思います。
次回、彼を撮れる機会があったらまたこのブログで紹介します。