その表情は自信に満ちあふれていた。
今日の全日本選手権スラローム、生田康宏選手は2位。堂々と佐々木明と湯浅直樹の間にわって入った。
彼がナショナルチームレベルの力があることは誰もが認めるところであった。しかし、ここ数年、レースでまともにゴールまで辿り着いたことがなく、失礼ながら、まさに「ノミの心臓」という言葉がぴったりくるような選手だった。
しかし、今シーズン初めから、その心臓は変身を遂げていった。
ナショナルチームからはずれた今季、彼はたった一人で、レースのエントリーから、車の運転、スキーの手入れをこなし、ヨーロッパと北米を転戦した。
所属企業からも結果を求められ、「今シーズンもし結果がでなければ」という話もされていた。
おいつめられ、そして孤独な闘いを経て、彼は
「ポジティブにものを考えていく」思考を手にいれた。
「スタート前は今でもまだ緊張はします。でもその緊張をポジティブに捉えることができるようになりました」。
そう語ってくれた生田の顔は自信に満ちあふれていた。こんな顔は今まで見たことがない。目が活きている。私はそう思った。
土壇場に追い込まれた今シーズンの生田康宏は見事に生まれ変わったと言ってもいいかもしれない。
おそらく来季はナショナルチームに復帰するであろう彼には、今季低迷したジャパンチームの新たな起爆剤になることを期待したい。