1秒に満たない瞬間をあなたはどう思うでしょう。
そのほんの一瞬が、今季のスラローム年間チャンピオンの座を分けました。
ワールドカップに限らず、すべてのレース競技は100分の1秒でも、1000分の1秒でも速いほうが勝者だということは今更言うまでもありません。
しかし、その「ほんの一瞬」を日常生活で実感することはほとんどないと言ってもいいでしょう。
それはまさにレーサーだけに与えられた、「貴重な一瞬」と言えるかもしれません。
私の学生時代のスキーコーチは、私たちだらしない学生によく言ってくれました。
「1分1秒を争うレーサーが決められた時間に遅刻するな」と。
それぐらい、時間に対する気遣いをしろという戒めでした。
それ以来、私は時間を大切にしようと努めてはいます。時にはだらしなくなるときはありますが。
マリオ・マットとベンヤミン・ライヒはチームメイトとして、また良きライバルとして共に今シーズン1年、戦ってきました。
1年を通して戦うなかで、
年間チャンピオンとその後塵を拝する2位に分たれた1秒にも満たない時間。
0秒97という一瞬、あなたはどう考えますか?
ただひとつだけ確かなことは、その一瞬のために、マットとライヒ、いや、出場した全レーサーは死力を尽くして闘ったということでしょう。
素晴らしいレースをありがとう。